勝村巌
@katsumura
2025年8月5日

ラーメンと瞑想
宇野常寛
編集者・評論家の宇野常寛のエッセイ(?)。宇野さんは知り合いの編集者のTさんと早朝のジョギングをしてはその後に瞑想をして、その後、昼食を共にする。その中で交わされた対話やお互いの変化が記されている。
『ラーメンと瞑想』というタイトルだが、ラーメンの方はラーメン以外の場合もある。トンカツや立ち食いそば、回転寿司など、高田馬場を中心にしたお店に2人は果敢にチャレンジしていく。
この本、大変不思議な構成になっている。趣味や性格のそれなりに異なる40代後半の男性2人が、なかなか難解な哲学的対話を交わしながら、美味しいものを食べる、ということが永遠に繰り返されるのだ。
このTという人間が本当に実在するかは不明だが、僕が高田馬場に住んでおり、店や地名が本当に僕の近所にあるものに集中しているので、行動範囲も近いと思われて、非常な親近感を抱いている。
フェミニズムなどで女性の権利などについて細かく語られることは増えたが、それでは40代男性についてはどうなのか。そういうことについてほのかに考えさせる内容だった。
宇野常寛さんの著書『庭の話』と合わせて読むと色々発見があるはずだ。このTさんというのは宇野常寛さんにとっては自信を写す鏡のような存在でもあるのだろう。スタイルに拘泥する頑迷さからTさんが脱して、心身が本来の人間に近づいていく過程が前向きにも語られている。
「お父さんはいつから中二病になったの?」と娘に聞かれるなど、僕も人ごとでないキラーフレーズがあった。ちょっと変わった問答集のようにも読める、不思議に哲学的な内容。激しくおすすめです。




