
ハム
@unia
2025年8月11日

文学は何の役に立つのか?
平野啓一郎
読み終わった
文学だけじゃなくて人文系の学問はすぐ役に立つのかと疑問を投げられることにモヤる人は多そう。
この問いにじっくり向き合う本かと思いきや、このテーマに類する平野さんの様々な論考をまとめたものだった。
でもいろんな角度から語られる論考はそれぞれに問いの答えを導いてくれる。
やはり安易な多様性への警鐘はここでもあって、こうした時代だからこそ文学を通して異なる人間の中にある共感や対話の可能性を探り当てることは大事だなと思う。
「生きている人間は、常に何か意外なことを口にするものであり、しかも何故か、同一性を維持し得るのである」
認知症でいくら性格が変わってもその人の同一性を疑うことはないのに、ある人の意識をインストールしたAIが少しでも意外なことを口にすればその人ではないと感じるのは確かに不思議。
ここに他者性の有無を感じ取って文学へのヒントを求めるくだりとか、ここに限らずだけど問題意識の持ち方がすごいなと感心しっぱなしでした。



