勝村巌
@katsumura
2025年8月13日

明るい部屋新装
ロラン・バルト,
花輪光
現代のフランスを代表する記号学者、哲学者による写真論。写真論と言っても写真表現のあり方などを論じているのではなく、ある特定の時間、特定の風景や人物を捉えた写真という現象をエクリチュール的に記号として読み解くというアプローチ。
写真に写された情景が、撮影者の意図などを超えて、単に物質としては過去の定着という意味の死を代弁する、という切り口から、具体的な表層“見えているもの)をストディウム、そこから見る人が感じ取るプンクトゥムという二つの概念を分けて考えていく。
プンクトゥムというのは、ベンヤミンの言うアウラのようなものだと思う。写真から鑑賞者が個人的に感じ取る何らかの郷愁などの感情的な享受のようなもので、それは写真が時間の中で演劇的に持ちうるもの、というような解釈なようだ。
ここはなるほどと思う。僕などは置いてきたものが多いので学生時代の写真などあえてみたいとは思わないが、それはつまり自分が感じ取るであろうプンクトゥムに煩わしさを感じているからなのかもしれない。
写真撮ったり、それを見返したりするときに心に発生する感情を丁寧に改題している本。写真というものは本当に面白い発明だと感じる。
