
ハム
@unia
2025年8月13日

トピーカ・スクール
ベン・ラーナー,
川野太郎
読み終わった
ここまで現代の分断された世界を物語として落とし込んでくることに驚く。
複数の視点で語られる物語は出来事の核心を明らかにしないことで立つ視点に応じて情報がいかにたやすく交錯するかを暗示しているかのよう。
メタ的なメッセージもひしひしと感じる。
一見すると複数の視点による雑多な情報で進む物語は読みにくいと感じるかもしれないけど、それこそアダムのディベートにおける「スプレッド」という速く効率的に敵を倒す量に訴える態度を読者に体験させるかのように意図的に構成しているのかなと思う。
情報が溢れ、質より量となり、意味がぼやける。
著者はそんな世界に警鐘を鳴らすかのように、アダムや家族らに言語の、議論のその先に向かう態度を示させる。
平野啓一郎さんの文学に関するエッセイを読み終えたばかりだからか、文学の可能性ってほんとこういうところにあるよねと感じさせてくれるめちゃくちゃ示唆に富む素晴らしい一冊。






