
ヒナタ
@hinata625141
2025年8月14日

翠雨の人
伊与原新
読み終わった
戦前の女性が高等教育を受けることも珍しかった時代に科学の道を切り開き、戦後は第五福竜丸の被爆事件を機に水爆実験による放射能汚染を実証し核兵器廃絶を訴えた、日本の女性科学者の草分け的存在、猿橋勝子さんの人生をテーマにした歴史フィクション。
伊与原先生の科学の専門的な知識を物語や文章に落とし込む力や丹念な取材力がいかんなく発揮されているように思う。
また、戦時下に科学が利用されることへの葛藤についての丁寧な描写は、今の大学や研究を取り巻く状況を踏まえてではないかなと感じた。猿橋さんは女性初の日本学術会議会員でもあったそう。同会議は「軍事目的のための科学研究を行わない」と声明にうたっている。
ふたつの原爆投下の日のあいだにこの小説が読めてよかった。第五福竜丸のことももっと知られるべきだと思う。たくさんのひとに読んでほしい本だし、いつか朝ドラになってほしいな。


