
pamo
@pamo
2025年8月15日

誘拐された西欧、あるいは中欧の悲劇
ミラン・クンデラ,
阿部賢一
読み終わった
感想
図書館本
面白かった。評論かと思って手に取ったら、中身は中央ヨーロッパの先人たちの講演・演説を収録したような本。
西欧になりきれず、さりとて旧ソ連圏の東欧でもない。国境は列強の気まぐれによって恣意的に引き直され、国は簡単に滅ぼされる。
そんな不信感・不安感のなかで、それでも列強に吸収されるのではなく一つの国民・民族として独立することを選んだ中欧の国々。
その国で生きてきた人から見た「国」というものの不確かさ、グローバリズムに対する猜疑心が感じられる。
大国ドイツの文化圏に染まった方が良いか。それとも弱小国家であろうと独自の文化圏を維持するべきか。どちらの方が国は発展するのか、先進国から取り残されないか、攻め滅ぼされないか。少数言語を使い続けるべきか、話者の多い言語を取り入れるべきか。
かつて日本もその悩みを持ち、明治維新やGHQ占領時代を乗り越えてきたことを思えば他人事ではない。
カフカの作品にある暗い不安感、美しいブダペストやプラハの街並み…中欧のいろいろな文化・芸術の下地が見えてくる。
