
千草
@chigusa2330
2025年8月19日

天才望遠鏡
額賀澪
読んでる
感想
「カケルの蹄音」を昨日読み終わったので感想を
怪我で陸上部を退部した翔はその反動から学校へ来る気力を失い、遅刻、サボり、赤点とどん底に落ちていた。そんな彼への救済措置として、馬術部での強制労働が課せられる。
このお話は他のお話と違って才能について書かれた話だと思った。分かりやすく天才という存在がいない。天才ではないけど、翔琉やズットカケルのように才能があって地道に頑張って来た者の話かなと。でも、翔琉は才能に見合った肉体を持ち合わせておらず、ズットカケルは頑丈な肉体はあったが、上の世界で勝ち抜く力がなかった。翔琉は特に人一倍頑張る気持ちがあったと思う。
夢破れた翔琉の気持ちは少しだけ共感できた。目標や夢がない状態は翔琉の言うように迷子になっているのとよく似ている。気力を失ってどん底に落ちている状態だと、大人の助言も説教も応援も鬱陶しくて、それは自分が1番自分の状況を分かっているからで、それでもなすすべがないから困っているわけで。読んでいて先生が構ってくるのを鬱陶しく思う気持ちがわかる気がした。その上、ズットカケルまで出て来て、翔琉の中では何も決まっていなくて迷っているのに、周りの環境だけはグルグル周り続けている感じがむずむずした。
でもだからこそ、翔琉がズットカケルに興味を持って、自らズットカケルに乗り、「助けてくれる?」とまで話しかけた変化にグッときた。翔琉が自分に向き合ったということが分かって良かった。
そしてラストシーン、ズットカケルが駆け出して、障害物を飛び越える瞬間は読んでいるこちらにもその景色が見えてくるようだった。翔琉とズットカケルの今後に期待したい。


