
ユメ
@yumeticmode
2025年7月15日

コーヒーにミルクを入れるような愛
くどうれいん
読み終わった
心に残る一節
感想
いつも鋭い感性で日常を切り取るくどうれいんさんが、「結婚」をどんな言葉で語るのか、読むのを楽しみにしていたエッセイ。
入籍当日の出来事を綴った文章には、夫となったミドリさんの「ふたりで暮らせば、しあわせは半分こ。悲しみは、二倍!」という冗談がお気に入りだと記されている。確かに誰かと暮らすことって、もちろんその分しあわせが増えることもあると思うけれど、相手の分まで悲しみを背負うことでもあるのかもしれない。くどうさんが言う通り、「二倍になった悲しみを、やんなっちゃうねと言い合うことができるなら素晴らしいこと」だし、そういうひとと共に暮らすというのが結婚というものかもしれないと思った。
同じく入籍当日のエッセイには、ミドリさんとの「飲みたくなったらいつでも飲めるように愛する人にコーヒーを淹れる。おれはそういうのが、結婚だと思うんだよねえ」「自分のために淹れてもらったコーヒーをコーヒー牛乳にしてふたりで飲む。わたしはそういうのが、結婚だと思うんだよねえ」という印象深いやりとりが出てくる。私の夫も、ミドリさんと同じように自分は飲まないコーヒーを私のためだけに淹れてくれるひとなのだが、私は「コーヒーにミルクを入れるような愛」を返せているだろうかとふと考えさせられた。自分にとって大切なひとをきちんと大切にしたい、素直にそう思わされるエッセイだ。
「類は友を呼ぶ」という言葉があるが、くどうさんのお友達も皆個性豊かで素敵なひとたちばかりで、いつもエッセイにお友達とのエピソードが登場するのを楽しみにしている。今回は、高校の同級生・樋口さんとのエピソードにとりわけしみじみさせられた。仕事に忙殺されていたくどうさんに樋口さんが掛けた「まあ、無理しないで。性格悪くなるよ」という言葉に私もハッとする。心に留めておきたい至言だ。



