
Suzuki
@finto__
2025年3月7日

いつか月夜
寺地はるな
読み終わった
★★★☆☆
「そんなふうにぼやく夏生は、けれども同じ口で、妻や子を大事に思っている、と言う。なんだかんだ言ってあいつらがいて幸せだと。冬至の気楽な生活がうらやましいよと言い、でもいつかは身を固めるんだよなと念を押す。心配と軽侮と優越感と蔑みがいれかわりたちかわり、夏生の頭に浮かぶ。なんて忙しないのだろうと呆れながら、同時に奇妙な親しみをも覚える。
兄もまた、必死に迷いながら生きているのだ。
「でも兄ちゃんは、幸せやろ?今」
「まあ、な」
質成は弟としてのつとめを正しく果たした気分になり、兄の了承を得ずにまたウニを注文した。」p158