ゆい奈 "女の子たち風船爆弾をつくる" 2025年8月22日

ゆい奈
ゆい奈
@tu1_book
2025年8月22日
女の子たち風船爆弾をつくる
春が来る。桜の花が咲いて散る。 戦果を上げたと喜び、わたしたちのものとされる領土は拡大していき、そこでは女が子供が犯され、男は殺されていった。次第に、無数のわたしと、わたしたちの背後にも戦争の影は近づき、ある日、学徒動員で招集される。 極秘で開発された風船爆弾「ふ号」は、太平洋上約8000kmを飛ばして横断させ、アメリカ本土への直接攻撃を狙った殺人兵器だった。風船の素材はゴムにかわる、和紙とコンニャク糊。手先の柔らかい若い女学生が和紙の貼り合わせに適している、ということにより、少女たちが選ばれた。飲んだり食べたりもせず、15時間ぶっ続けでの労働、睡眠時間は3、4時間、手はたらこのように腫れ、そして白い二粒の錠剤(おそらく覚醒剤)を飲まされていた。彼女たちが、じぶんたちがなにを作っていたのか、それで人が死んだということを知るのは終戦後40年の時が経ってからのこと。戦争に加担していたという真実を知ったのは56歳、あるいは57歳のときであった。 春が来る。桜の花が咲いて散る。 無数のわたしと、わたしたちから、語られたあの日々の真実。 戦争というのは容赦がない。そのときがくれば、たとえ子供でも否応なく巻き込まれていく。加害者にも、被害者にもなりうる。だから、こんなことは、二度と起こしてはならないのだと、戦争反対と大きな声でいえる今をつづけられるように、何度も何度も訴え続ける。人が人を殺して、なにになるというのか。今もなお、世界では、人が人を殺している、人を人として見ていない人たちがいる。絶望してもなにもはじまらない。だけど絶望してしまう。世界中から戦争がなくなりますようにと願うことしかできない。あまりにも無力。
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