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@penguin
2025年8月23日

カウンセリングの実際
河合俊雄,
河合隼雄
東畑開人さんの『カウンセリングとは何か』がもうすぐ出るので心理療法まわりの本を色々読んでいる。その中でブックオフで見つけた本。
P56〜、明らかに問題解決が見込めない悩みでカウンセリングに来たクライエントにどう対応するか、の話が面白い。知的障害の子どもがいる、事故で手を失った、などが例で挙げられている。
この時、話を聞いているとまず自分の状況への恨みが語られ、引き続き耳を傾けていると今度は嬉しさや感謝が語られはじめる。幸福を見出しはじめる。しかしそれで解決、おしまいというのではなく、もう少しつづけていくと、また同じ嘆きに戻っていく。
人の悩みは簡単には解決しない。でもカウンセリングで得た経験や洞察には意味がある。その繰り返しで人格が深まっていく
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@penguin
p71 自我防衛について
現実に合わせて自分を変化させようとすると同時に、人はあまり変わりすぎないように自分の心を守ってもいる。変化することと変化しないようにすることのせめぎ合いのなかで、ゆっくりと変化が起こる、ということ。
4章のカウンセラーの態度と理論も面白い
他者が一方的に何かを強制するのではなく、心が自発的に変わる必要がある、しかしそれはとにかく時間がかかること。そしてその立場をカウンセラーとして引き受けるということは、何もしないのとも積極的に働きかけるのとも違うんだ、無条件的積極的関心でgenuineな態度が必要なんだと言っている(p115)
p128のカウンセラーの気持ちとクライエントの気持ちの間にある重心に向かって言葉を打ち込むんだ、という話も、かなり感覚的でよくわからないがわかる気もして面白い
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@penguin
カウンセリングというと遠く感じるけど、文章が平易で難しい専門用語もほぼない。クライエントを「相談する人」カウンセラーを「話を聞く人」に言い換えて読むことができる。
現実には日常生活で相談に乗ることは、自分の心が付き合える限界があり、しかもそのキャパシティは自分が思う以上に小さい。だからこそ、それを仕事として、つまり自分を抑制しながらそれを行うカウンセリングに、「人の話を聞くこと」の純化されたものを見てしまうのかも。
河合隼雄はしかも自分の感じ方を抑制はするけど閉じ込めてはいない、自分の心をかなり使いながら向き合っているので、その点でも一般的な人が重ねやすいように思う。こういうのは私がカウンセラーでないからこその感想かもしれないが。
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@penguin
p96カウンセリングの二律背反も大事。色んな考え方があって単純に説明はできず、AもBも正しく思える。その間を揺れ動きながら、葛藤しながら自分なりに答えを見つけていくのだと。
その誠実さは存分に伝わってくる文体でありながら、重くないのが良い。「そういうもの」として軽やかにスタートを切る感じ