橋本吉央 "団地のふたり" 2025年8月23日

橋本吉央
橋本吉央
@yoshichiha
2025年8月23日
団地のふたり
団地のふたり
藤野千夜
50代の女性二人が主人公なわけだが、やはり現代的な50代で、かなり若い印象を受けた。年齢による心身への影響をうかがわせる描写がほとんど出てこない。サブカルのキーワードが年代を象徴する感じはあったかもしれないが、「歳をとっている」というよりは「自分とは違う世代だ」というくらい。 なので、30代でも、40代でも通じるようなキャラクター設定であるように思う。もちろん、30代であれば、これから結婚がありえるかとかそういう「未来への重荷」みたいなものがあるだろうから、そういう要素がない、というのは違いではあると思う。昔の50代と今の50代は違う、というネオテニー的なものを感じる。 二人の関係は、少しケンカをするくらいで、進んだり戻ったりということもほぼなく、本当に日常の近くに住む友達関係を近隣の人との関わり含め淡々と書いている。「ドラマチック」という意味では、人が変わることが物語の重要な要素なのかもしれないが、変わらない関係、多少揺らいでも戻ってくる日常を丁寧に描く意味も結構あるように思う。変わらなければいけない、と思いすぎなくても良いのかも、と思えるような。変わらずにいられることのありがたさ、でもある。
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