
夜
@butiloveu
2025年8月23日

舟を編む
三浦しをん
買った
読み終わった
「辞書は必ずしも万能ではないと知り、荒木は落胆するどころか、ますます愛着を深めた。かゆいところに手が届ききらぬ箇所があるのも、がんばっている感じがして、とてもいい」
私は約款を読むときにこの感覚を抱くのだけれど、同じような感性の人がいることが嬉しかった。
「多くのひとが、長く安心して乗れるような舟を。さびしさに打ちひしがれそうな旅の日々にも、心強い相棒になるような舟を」
「そういえば西岡さんにも言われたことがあります。『その辞書を引いたひとが、心強く感じるか想像してみろ』と。自分は同性を愛する人間なのかもしれない、と思った若者が『大渡海』で『あい【愛】』を引く。そのときに『異性を慕う気持ち』と書いてあったらどう感じるか。」
言葉というものについて悩むたび、それがひとが使うもの、用いるものであるという認識がぼやけていく。思考や、意思や、経験といったものと密接不可分だからだ。けれどやはり、言葉はひとが用いるものなのだ。それを忘れてはいけない。
登場する人たちの、辞書や仕事に懸ける想いの熱に当てられた。仕事のうちには人がいて、仕事の先にもひとがいる。何の仕事をするにしてもそれを考えていたい。
