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@bunkobonsuki
2025年8月24日

口述筆記で書かれたことで有名な太宰治の『駆け込み訴え』。本作はタイトル通り、駆け足で、喘ぐように吐き出される文体が特徴。
イエス・キリストを神の子でも聖人でもなく一人の人間として愛したユダの苦しみが、読者の共感を呼ぶ。師の清濁を憎しみ、慈しむ姿勢は、裏切り者と言い切るには酷なほど純情である。
偉大なる師を傍で眺めるという文学作品は、中島敦の『子路』でも見受けられる。孔子と子路の関係は、本作のイエスとユダにそっくりだ。
しかし、ユダが清濁併呑しながらも裏切ったのに対して、子路は孔子へ疑問を投げかけながらも最期まで信じ切った。両作を併読して、師や弟子を比べてみるのも面白い。


