
noko
@nokonoko
2025年8月24日

ケアと編集
白石正明
読み終わった
借りてきた
心に残る一節
「手を動かすより口を動かせ」
確かに大事な話しかしちゃいけなかったら、誰の口も動かないだろうからね。
まーなんだかんだあっても、話し合えば解決するよね、となると思いきや、「ミーティングなんかで解決しない」と断言し、なおかつ「そこがいいんだわ」と結論づける、いかにもべてるらしい脱力的な話だし、実際私もその文脈でこのマンガを紹介していた。
それから二〇年。フィンランドの一病院ではじまった「オープンダイアローグ」が日本にやってくると、この潔さんの言っている意味が、鈍い私にもやっとわかってきたのだった。
一言でいえば、話す内容ではなく、話している行為そのものに価値があるということだ。話すという行為を続けているうちに、当初問題とされていたこと自体が変容してきたり、それを問うことの意味がなくなったり、どうでもよくなったりする。要するに、問題は「解決しないけれど、解消してしまった」と言う状態がしばしばやってくるのだ。
「俺はさぁ、ひとっつも変わろうと思ってないよ。治ろうとか成長しようとか。もう今で完全なんだよね」と。
その時、痺れるような感動がやってきた。多くの人はもっと謙虚に(笑)、今より少しでも良くなろう、病気だったら治そう、成長しようとか言うはずなのに、彼は今が既にして完全で、その発現を邪魔するものは払いのけるにしても、成長しようとかまったかく思っていないと。
この「すでにして完全」という発想を例えば教育現場に持っていったらどうなるか。今がゼロだから、せっせとノウハウを積み上げて、やがて社会に出ても恥ずかしくない人間に成長しなければならない、という方向にはいかないだろう。すでにして完全なのに、現実にはうまくやっていけないとしたら、その完全な発言を邪魔する要素があるわけだから、それを探して払いのけよう。同時に、その生徒に隠されている完全さを探して、それを強調しようとするのではないか。

