
祥
@kino_s5
2025年8月23日

国宝 下 花道篇
吉田修一
読み終わった
映画を観た
ようやっと、読み終わりました。
地の文が、落語とかみたいな口上って言うのかな(さて〜と言いますのは、とか、〜なのでございます、とか)そんな表現方法で馴染みがなかったせいか、だいぶ時間をかけてしまった。
ちょっと、ネタバレ的な感想にもなってしまいますが…。
上巻の途中まで読んで映画を観に行ったので、読みながら「ああ、このシーンを喜久雄に振り分けたんだな」とか「この台詞を、この人に言わせたんだな」というのが、色々と散りばめられていて、映画と原作の違いを見つけるのも読んでて楽しかった。
ただ、映画ではずっと喜久雄の味方だったように描かれていた三友社員の竹野。
これは、映画では少年期以降すっかり存在をカットされた徳ちゃん要素を入れられているんだなと。
読んでいてずっと考えていたのは、この地の文は誰なんだろうっていうのと、喜久雄は父の本当の仇をいつ知るのだろうということ。
物語の序盤から、喜久雄の父が誰に殺されたか、既にこちらは知っている状態で。
でも、喜久雄は知らないから、相手を勘違いしたまま敵討ちに出るし、長い間真犯人と知ることなく縁を繋いでいく。
読んでるこっちからすれば、「そいつは喜久雄の父親殺した真犯人だぞ」って教えたくなるくらい。
地の文に関しては、芸の神様が喜久雄の行く末を見守っているのか、それとも喜久雄が契約した悪魔が、気まぐれに喜久雄を観察していたのか。
はたまた、喜久雄の亡き実母が息子を心配して見守っていたのか。
悪魔だったら、ラストの解釈として、喜久雄の願いを叶えた対価としてその魂を手に入れたのかなって思ったのだけど。
芸の神様だとしても、やっぱり喜久雄を手元に置きたくてその魂を誘ったのかなとも思ってしまう。
亡き実母だったとしたら、ずっと頑張ってきた息子に、もう大丈夫だよと、楽にさせてあげたかったのかな。
ラストが衝撃的というか唖然というか…読者に想像させる余地を残しているからこそ、原作とは違う映画の締め方だったのかな。
映画では、喜久雄は最後報われているように感じたから。
ああ、でも、原作の喜久雄にとっては、あれで報われたことになるのかな。
読み終わってから、こんなにも登場人物達のことを考えてしまうのは久しぶりです。
読み応えのある物語でした。


