べりん "文化系のための野球入門" 2025年8月25日

べりん
べりん
@ngske94
2025年8月25日
文化系のための野球入門
もともと野球観戦が好き(競技経験はありません)、そして昨今の高校野球の暴力問題もある中、このタイトルの本には高校野球に根付く問題の整理がされているのではと期待し手に取りました。 特に印象的だったのは「学生野球のプロフェッショナル化」と「スポーツの意義」についてです。 「学生野球のプロフェッショナル化」は、野球部に所属する生徒が野球だけに特化して学生生活を送る状態です。その場合の多くは勝利・実力至上主義の世界観に支配されています。 スポーツなんだから勝ちを目指すのは自然なことではあるのですが、学生野球はあくまでアマチュアです。 アマチュアとは「競技の他に本分がある身分」のこと。 学生野球であれば学業、社会人野球であれば社業が本分です。アマチュアの選手は本分の傍ら、野球をプレーしているのです。 ところが、(特に強豪私学の)野球部ではアマチュアリズムが置き去りになり、有望な中学生を特待生や推薦で入学させ、学業成績や進学を優遇しながら、野球部の主力選手とする動きがよく見られます。 この本は、学生生活からアマチュアリズムがなくなり、プロフェッショナル化することに思いを巡らせるきっかけになりました。 「スポーツの意義」は、スポーツはそもそも健康のための体育をしながらゲーム性を楽しむものでないかという提言です。 この本によると野球はそもそも、明治時代の学生の運動不足解消のために広まったものとのことです。(それがなぜ国民的スポーツになったかの背景や歴史は、実際に読んでみてください) 現代では、健康のために運動が必要であることは様々な科学的知見から明らかです。 健康な身体つくりのために筋トレやストレッチをすることは良いのですが、そればかりだと運動が単調になりがちです。 そこで運動にゲーム性を持たせた、「スポーツ」を楽しもうという考えが、この本ではなされています。 先に書いた通り、野球部はプロフェッショナル化が強くなっている一方で、スポーツとしての野球はもっと気楽で敷居の低いものであっていいと提言されています。 これについては私も同意していて、何か高校野球を見ていて知らないうちに野球をプレーする敷居が高く感じていました。 ところが草野球でも壁当てでも、野球を楽しむことに何も敷居はないと思います。 野球の歴史を教養として知ることができ、また野球のあり方について考えを巡らせるきっかけとなる本でした。
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