socotsu "苦海浄土" 2025年8月26日

socotsu
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@shelf_soya
2025年8月26日
苦海浄土
苦海浄土
石牟礼道子
文字を読める・読む、ということを当たり前のこととして生きている、それは日々を営むためのみならず、文化を受け継ぎ、記録するためにも必要なツールである、ということを疑いもしない人間に対する強烈なカウンターを、製本された分厚い紙の束として、時間も土地も隔てた人間が手に取ることができる・読み続けられることのおかしさ、有難さ、一言では表しがたい感覚が寄せては引いていく作品。 解説で池澤夏樹がチッソ社長室にいたる流れを「コメディー」と称していて、私もその「双六」ぶりや、チッソの人たちとのやりとりを読みながら、ここでこの表現を用いてよいかわからないけれど、悲劇と喜劇は裏表なのかもしれない、と思っていたので、とても納得した。誰が誰を笑っているのか、笑えるのか。思えば御詠歌の練習をちゃんとやらない・歌詞を間違えてしまうくだりや、「運動」の一部であっても、読む側も描かれている側もまじめな顔ができなくなる・していないような、メインの流れからはみだした部分にこそ、あらわれる人のいとなみのようなものも、この本の魅力だと思う。あまりにも長編なので、部分の話をしたくなってしまう。
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