
巽
@Tatumi
2025年8月27日

村木道彦歌集
村木道彦
思想なき声ゆえ澄みて透れるをゆうぐれひくくとりわたるなり
フランシーヌのようにひとりであるけれどさらにひとりになりたくて なつ
おぼろおぼろひざしはあわくくれがたを 転落ということばありけり
なつ真夏葉月八月ガラス越し玉の緒のごと蛙を見たり
過ぎゆきてふたたびかえらざるものを なのはなばたけ なのはなの はな
愛恋や憎悪やいずれともかくも激しき視線もてわれを射よ
すてしこと それよりにがきすてられしこともあんずの花さけるころ
ややよごれているガラスごしみはるかす金のむぎばた 銀の憂愁
にみはきみばかりを愛しぼくはぼくばかりのおもいに逢う星の夜
ふかづめの手をポケットにづんといれ みづのしたたるやうなゆふぐれ
すふだろう ぼくをすててるものがたりマシュマロくちにほおばりながら
めをほそめみるものなべてあやうきか あやうし緋色の一脚の椅子