
あんどん書房
@andn
2025年1月15日

箱庭クロニクル
坂崎かおる
読み終わった
文學界で知った作者で、人々の交流を描くのが上手い方だなーと思っていた。
短編集で、最初の作品「ベルを鳴らして」が特に好きだ。
戦時中にタイピストとして働いていた女性の回想物語なのだが、中国人だったタイピングの先生と学友との交流、そして抗いようのない時代の流れを描きつつ、最後は全ての鍵がはまっていくような美しく切ない展開。これはものすごい作品を読んだなという感想。
他の作品に関しても、時代や状況は様々だけど、絶妙な設定を用いながら現代的な問題に切り込んでいるなと思った。
五作目「あたたかくもやわらかくもないそれ」の書き出し
「ゾンビは治る。マツモトキヨシに薬が売ってる」(P176)
は個人的に現段階で2025年ベストオブ書き出しです。
切り絵:Teresa Currea

