
米谷隆佑
@yoneryu_
2025年8月28日

このあたりの人たち
川上弘美
読み終わった
改行した瞬間、世界が一変して混乱の町に。いつもの風景が馴染んで安心したと思ったら、不穏な世界に戻される読書体験。たまに元に戻れなかった人や変わった世界に馴染めない人がいる描写に面白さを感じた。
掌編小説らしい、話題を広げて畳むやり方は、4コマ漫画や俳句のテンポに近くて、26ある物語もするするっと読み解けてしまう。川上弘美はひらがなを多用して優しい文体を使って語りかけてくるが、時折りルビが振られてもわからない硬い漢字の意味に揺さぶられることがある。それも、調子を崩す楽しみである。
世界の改変に、続いていた物語の連なりを無視する「概念」の侵入を許したり、身体ごと情報を書き換えるすっとんきょうなユーモアを混ぜてみたりで、始終しっちゃかめっちゃか。世界がめちゃくちゃなのに、物語の核を担っていた友人や隣人が成功者になる。幸せになるのを横目に、語り部は感情を露わにしないのが不穏、不可解、そして怖い。
どこか、ガルシア=マルケスのマジックリアリズムの息づかいを感じるのは、気のせいだろうか。


