
akamatie
@matie
2025年8月29日

わたしたちが光の速さで進めないなら
ユン・ジヨン,
カン・バンファ,
キム・チョヨプ
読み終わった
韓国のSFってどんなものだろうという好奇心から読み始めた一冊。
ガチガチの未来予測や、技術と人間の倫理の対立といった典型的なSF要素はあまりなく、最初は少し物足りなさも感じた。でも、読み進めるうちにこの短編たちが描こうとしているのはテクノロジーについてではなく、つながりや喪失、人間と他者との関係性なのだと気づかされる。
外部との接触を断ってルッキズムを排除した村に暮らす人々、言語や生命観が根本的に異なる種族との出会い、私たちの自我の起源に迫るような宇宙的存在との接触など
どの話も、人はどうやって他者と理解し合えるのか、なぜ分断が起こるのかといった問いを投げかけてくる。
表題作「わたしたちが光の速さで進めないなら」では、冷凍睡眠やワープ航法によって引き裂かれた家族の物語が、行政職員と取り残された老人という二者の視点で描かれる。光の速さでは進めない人間の身体や心、制度の冷たさ、それでもなお求めてしまう家族とのつながり。このジレンマは、今の社会でも度々目にする悲しみだと思う。
隣国韓国の女性が描いた作品だからこそのシンパシーなのか、細やかな感情や心の距離感がじわじわと胸に沁みてくる短編集だった。







