
もん
@_mom_n
2025年8月29日

植物少女
朝比奈秋
読み終わった
心に残る一節
@ 自宅
朝比奈秋さんの小説を読むのは『私の盲端』『あなたの燃える左手で』に続いて3作目だが、私は『植物少女』が一番好き。静かでひんやりしてすべすべしたくなるような読み心地。ここには書ききれないほど好きな場面や文章がたくさんある。今後純文学のおすすめ作品を聞かれたらこの本を勧めたい。
p.72
わたしの母は動かないし、しゃべらない。目も開けないし、笑わない。それがよかった。
しかし、目の前にいるのは、やはり普通に生きていたあの女性が脳にダメージを負って、何もできなくなった人。
それが今の母で間違いなさそうだった。
p.112
みんながわたしにゴミを投げつけてきた。空っぽのものを見れば、そこにゴミを投げ入れたくなる。それは当たり前のことだった。
でも、わたしは他人のゴミ箱になる気はない。
p.175
すでにそこに母がいないことはわかっていた。ただ、呼吸でもって母の存在を伝えてくれたこの体を、今はもう本当に空っぽになったこの体を、いくつかの言葉で満たしたかった。



