ルイス "藍を継ぐ海" 2025年8月12日

ルイス
ルイス
@lou2s
2025年8月12日
藍を継ぐ海
藍を継ぐ海
伊与原新
直木賞受賞作品。山口、奈良、長崎、北海道、徳島——日本各地を舞台に、地質学、科学、歴史がその土地に生きた人々の物語と織りなす5つの短編集。 特に印象深かったのは、表題作「藍を継ぐ海」のウミガメの回遊ルートと人の人生のルートが交差する物語と、「祈りの破片」における長崎原爆後の研究者を描いた一篇だった。まさに8月9日前後に読書していた時期に、浦上天主堂の「原爆で失われた鐘」が80年の時を経て復元されるニュースが舞い込んできた。文学と現実が交錯するその瞬間に、深く胸を突かれる思いがした。 全体を通して静謐な筆致で綴られ、劇的な起伏こそないものの、読み手に深く考えさせる作品だった。時にはこうした静かな力を持つ作品に触れることの意味を、改めて感じさせてくれた一冊である。
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