阿久津隆 "トピーカ・スクール" 2025年8月20日

阿久津隆
阿久津隆
@akttkc
2025年8月20日
トピーカ・スクール
トピーカ・スクール
ベン・ラーナー,
川野太郎
トピーカではなく今はニューヨーク、マンハッタン。ドーニャ・アラナのアパートメントを訪問してアダムは家族といた。 p.329 娘たちに会話の内容を知られたくないとき、ナタリアと僕は音節の多い職業語や複雑で一般性のない「十セント語」といった、僕には英語でしかできないような用語で喋ったが、それは深刻な話題を一種のゲームにするのにも役立った―大人の話しかたを真似る子供のような気分になれた。というわけで僕は言った、「神経変性は目撃するのに厄介だけど彼女の根源的な人格は無傷だよ」とか、そんなふうに。ナタリアは「私の願いは彼女が施設に移転せずに終点に着くこと」とか、そんな言いかたをした。信号が変わって道を渡ると、ルナが〈ミスター・ソフティ〉のトラックを指差した。パパ、アイスクリームくれるって言ったよね。いや、ビシの家でクッキーをもらうか、それを我慢したらアイスクリームをあげると言ったんだ、血中に放出される糖分の点で有罪になるよ。 泣いちゃう。『10:04』にあったユーモアの感覚は多分これで、それがここに来て現れて、泣いちゃう。一家はマンハッタンを南に下って91番通りからヒッポ・プレイグラウンドに入ってカバの公園だ。そこで意地悪な男の子が登場して父親はもっと意地悪で、アダムが対峙した。スーパーで敵対する同級生と遭遇する場面を思い出した。かつては息子としてあるいは孫として、今度は父親として、暴力の直前にアダムは立っていた。泣いちゃう。
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