くん "白魔の檻" 2025年9月1日

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@kun
2025年9月1日
白魔の檻
白魔の檻
山口未桜
今回も展開と真相が気になって一気読みしてしまった。 「禁忌の子」の続編「白魔の檻」の主人公は、前作の冒頭に一瞬だけ登場した研修医の春田。 前作のテーマが生殖医療、今作は過疎地医療の現実。 へき地での医療は、現場で戦う医師や看護師などの医療従事者たちのやり甲斐だけでギリギリ成り立っているが、すでに限界を迎えている。 その限界からの悲劇と、東日本大震災、阪神淡路大震災が事件と複雑に絡み合い、事件の真相が解かれた時、哀しいやるせ無さと、それでも医療従事者は目の前に患者がいれば体が勝手に動いてしまうという現実が重かった。 前作は少し遠い世界の話に感じられた部分があったけど、今作はすぐ近くにある残酷な現実だった。 迫り来る硫化水素によって、へき地の病院は自然の密室となり、閉じ込められた病院内で起こる密室殺人のトリックは、目に見えるヒントから真相を解くことはできなくても、別の視点から見る事で簡単に突破できるトリックだった。 登場人物たちはそれぞれ誰にも言えない、誰にも理解でき無い苦しみや葛藤があり、どれも重かった。 城崎先生の「生きていてほしかったんだ」という言葉にも、彼の優しさと苦しみがこめられているようだった。
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