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2025年9月1日

地球にちりばめられて (講談社文庫)
多和田葉子
日本語で書かれていて日本語を読んでいるという実感はあるのだけれど、読み心地にはそれとはまた別の、どこの言語とは言えないけれど新鮮で何故か心踊るような響き、フロウがあって。そんな感覚に誘われて2回目を読んでいる。
「国」「民族」「言語」など、大きな物語にカテゴライズされれば、そこにアイデンティティを見出してしまうこともあるけれど、その中にも当然、個人的なそれぞれの小さな物語がある。「地球に散りばめられて」いるそれらは、大きなカテゴリやそこに付随するある意味では押し付けられたアイデンティティを乗り越え、「母国」「母語」の束縛、依存から逃れられれば(そこに「母」という言葉が使われていたり、この小説でもそれを象徴するような息子を束縛する「母親」が描かれることには、少し違和感があるけれど)繋がることが出来る。「母語」を探す旅は、幾人もの人々と繋がることで結果的にそこから離れていく旅になる(ような気がしている)。そこでは新たな自分だけのアイデンティティや、語られるべき物語も生まれる。そんなことを考えながら読んでいる。



