
読書猫
@bookcat
2025年8月31日

隣りの女新装版
向田邦子
読み終わった
(本文抜粋)
“「上野。尾久。赤羽。浦和。大宮。宮原。上尾。桶川。北本。鴻巣。吹上」
男の声は低いが響きのいい声である。ひとつひとつの駅名を、まるで詩でもよむように言ってゆく。夢ではない。声は明らかに、壁の向うから、隣りの部屋から聞こえてくる。”
(「隣りの女」より)
“桃子は、勤めから帰ってアパートの窓が見えてくると、自分たちの部屋だけ明りが暗いように見えた。ドアの前で大きく深呼吸をして、
「ただいまァ」
勢いよくなかへ入った。”
(「胡桃の部屋」より)
”昨日から日記は白紙である。一番の真実は、本当のことは書けないということがよく判った。“
(「下駄」より)

