藤田知礼|Fujita Chiaki "Tugumi" 2025年9月2日

Tugumi
Tugumi
よしもとばなな
昔から「いちばん好きな季節は?」と聞かれたら、「夏の終わりから秋にかけて」と答えてきた。 この時期の夕暮れや海を見て、その美しさや儚さ、留めておけない"今"に心を揺さぶられるたび、写真に上手く残せないのがもどかしくなって、この光景を動いた心ごとそのまま写し取れないものか、と思ってきた。 この本はまさにそれを見事にやってのけている。 もう今ではないけどかつて確かに今だった瞬間、二度とは戻らないきらめきを繊細にしっかりと捉えていて、いつかの夏にまたページを捲ればこのきらめきを再び味わえるんだろうな、と思えた(今と感じ方は変わっているだろうけど)。そんな一冊に出会えて嬉しい。 どこが似ているっていうわけじゃないけど、小川洋子さんの『シュガータイム』と並べて本棚に置きたい。 夏の終わりに読めてよかった。
読書のSNS&記録アプリ
hero-image
詳しく見る
©fuzkue 2025, All rights reserved