
torajiro
@torajiro
2025年9月5日

嫉妬論
山本圭
読み終わった
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妬み、嫉み、恨みつらみ
ルサンチマン、他人の不幸は蜜の味…
私たちの社会生活において日々出会う感情だが、合理的・理性的な人間像を基本とする社会科学の主流においては自分を引き上げることよりも他人を引き下げることを望む負の感情は適切に扱うことが難しかった。
とはいえ、文学では主要なテーマの一つでもある嫉妬について、思想家たちはあれこれと論じてきた。本書ではそうした嫉妬論を概説したり、「自慢や誇示」についての思想を追って嫉妬に別の角度から輪郭を与えたりする。基本的に嫉妬は負の感情であり、良い面はほとんどないというのが、多くの思想家たちに共通しているところだが、最後に著者は負の感情であったとしても、嫉妬をなくすことはできないし、完全に無くしてしまえばいいものでもないと言う。嫉妬の源泉は対等性(自分とまったく異なるものに嫉妬はしない)と差異であり、この二つは民主主義の源泉でもあるからだ。民主主義の理念と嫉妬の情念は光と影のようなものとして付き合い方を考えていく必要がある。
社会の中に嫉妬を解消するための仕組みや機会を織り込むマクロレベルの対策も、ミクロレベルで一人一人が対処していく対策も(著者は半端に比較して嫉妬するのではなく、比較から無理に降りるのでもなく、徹底的に比較するのが良いと言う)、どちらもやり続けていくことが重要だという。はてさて。


