まいける "かたばみ" 2025年9月5日

かたばみ
かたばみ
木内昇
戦前戦後、苦い経験をたくさん重ねて、どんどん家族の絆が強くなっていく。清太の球威を増したボールをへっぴり腰でキャッチする権蔵がいい。たまらなくいい。権蔵と秘密特訓する悌子ももちろんいい。 権蔵が清太を子ども扱いせずに大人の言葉で話しかける。わからない言葉は辞書でひけと。言葉は自分を支えることがあるからと。どんどん子煩悩になっていく権蔵に感情移入しながら読んでいった。 悌子の先輩、吉川先生の「少国民である前に、すでにひとりの立派な人間です。」という考え。あの時勢で何人の教師がもっていたんだろう。終戦前は政府の、終戦後はGHQの言いなりになった教頭のような大人が多かったにちがいない。「黙って従っていた人も戦犯なのよ。」という加恵先生の一言は強烈だ。 悌子先生で一番好きな場面は、子どもたちと空を見上げながら、本当になりたい自分を語り合う場面。後で大目玉をくらうけど、そんなおおらかさが彼女の魅力。 時代が悲劇を生んだ。でも、その中でも、温かい人間関係が育まれ、人と人が結びついていく。もう一度読みたくなる長編小説だった。 ありがとうございます、木内昇さん。
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