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@oheso
2025年9月5日

ソーンダーズ先生の小説教室 ロシア文学に学ぶ書くこと、読むこと、生きること
ジョージ・ソーンダーズ,
柳田麻里,
秋草俊一郎
読み終わった
@ カフェ
ぼくにとってソーンダーズの『短くて恐ろしいフィルの時代』は印象深い作品で、その作者の技術論が知りたくて手に取った。
本書ではチェーホフ、ルツゲーネフ、トルストイ、ゴーゴリの小説を題材に、「よい小説とはなにか」「それを書くにはどうしたらいいのか」についてソーンダーズが「授業」する構成。7つの短編小説は創作の技術を得るための検体(そう、それは技術のために完成された表現を検分していく少しのグロテスクさも含んで!)として解体されていく。どれも巨匠たちが19世紀ロシアの検閲をくぐり抜け書いたものであり、そもそも作品自体がおもしろい。
ところがソーンダーズの語りを聞いたのちに読み返すと、3D化されたように表現が立ち上がってくる。たとえば、緩慢で鼻持ちならなかった人間がどうして魅力的に映るのか。村の居酒屋の冗長な描写に作者があえて立ち止まった意図は何か。気は良いが抵抗せずに人生を終えていく凡人になぜ我々は心動かされるのか。短編を読み終えた後に続くソーンダーズの授業は、ひとつの解釈を示していく。そのアウトラインを持って作品を見直すと、おもしろさがより迫ってくるのだった。
題材とされている短編は以下のとおり。すべて本書のための新約。
・アントン・チェーホフ『荷馬車で』
・イヴァン・ツルゲーネフ『のど自慢』
・アントン・チェーホフ『かわいいひと』
・レフ・トルストイ『主人と下男』
・ニコライ・ゴーゴリ『鼻』
・アントン・チェーホフ『すぐり』
・レフ・トルストイ『壺のアリョーシャ』

