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- 2025年10月5日揺れる輪郭グレアム・マクレー・バーネット読み終わった@ 自宅サイコセラピストであるブライスウェイトの研究を進める、本書の書き手らしき「私」。ある日、ブライスウェイトに治療を受けたという匿名女性の記録ノートが届くのだが…。 「だれかによって書かれたもの」が避けがたく帯びてしまうフィクショナルさと、「だれかを演じながら輪郭を濃くしていく個人」の頼りなさゆえの強度。その揺れに居心地の悪さを感じるが、その歪さが生の実感を強調してくれるのも事実だった。
- 2025年9月23日読み終わった@ ファミレスお馴染み幸福の科学、真如苑、崇教真光、統一教会、創価学会などが登場。章立てはされていないが、天理教や日蓮正宗も触れられる。アフリカのアミニズム的原始宗教と日本の神道含む宗教観に親和性があり、キリスト教・イスラム教などが明確にしない部分に新興宗教の「わかりやすさ」が答えを示す点が受け入れられていると著者は指摘する。 個人的におもしろかったのは、日本ではどうしても気になる過剰な寄進やカルト的孤立といった雰囲気が、本書からは感じられなかったところ。日本から距離があるからか、それとも経済格差でそもそも商売的にうまみの少ない場所だから?日本では注目されづらい新興宗教の教義そのものが流通するために、地理的要因がうまく機能する場合もあるのかも。
- 2025年9月5日ソーンダーズ先生の小説教室 ロシア文学に学ぶ書くこと、読むこと、生きることジョージ・ソーンダーズ,柳田麻里,秋草俊一郎読み終わった@ カフェぼくにとってソーンダーズの『短くて恐ろしいフィルの時代』は印象深い作品で、その作者の技術論が知りたくて手に取った。 本書ではチェーホフ、ルツゲーネフ、トルストイ、ゴーゴリの小説を題材に、「よい小説とはなにか」「それを書くにはどうしたらいいのか」についてソーンダーズが「授業」する構成。7つの短編小説は創作の技術を得るための検体(そう、それは技術のために完成された表現を検分していく少しのグロテスクさも含んで!)として解体されていく。どれも巨匠たちが19世紀ロシアの検閲をくぐり抜け書いたものであり、そもそも作品自体がおもしろい。 ところがソーンダーズの語りを聞いたのちに読み返すと、3D化されたように表現が立ち上がってくる。たとえば、緩慢で鼻持ちならなかった人間がどうして魅力的に映るのか。村の居酒屋の冗長な描写に作者があえて立ち止まった意図は何か。気は良いが抵抗せずに人生を終えていく凡人になぜ我々は心動かされるのか。短編を読み終えた後に続くソーンダーズの授業は、ひとつの解釈を示していく。そのアウトラインを持って作品を見直すと、おもしろさがより迫ってくるのだった。 題材とされている短編は以下のとおり。すべて本書のための新約。 ・アントン・チェーホフ『荷馬車で』 ・イヴァン・ツルゲーネフ『のど自慢』 ・アントン・チェーホフ『かわいいひと』 ・レフ・トルストイ『主人と下男』 ・ニコライ・ゴーゴリ『鼻』 ・アントン・チェーホフ『すぐり』 ・レフ・トルストイ『壺のアリョーシャ』
- 2025年8月19日野生のしっそう猪瀬浩平読み終わった@ 自宅異質な存在を勝手に解釈し、行政的判断に基づき管理する社会。どのような状況でも、自らの内面にのみ従い、野生の力をまとうかのようにしっそうする兄。兄の経験や思考を追いながらも、あくまで兄を理解するのではなく、自分自身の思考の仕方を問い直す著者。他者といっとき時間を共にし、身体性を共有することで、「誰かを人ではないものとして扱う思考に対して、抗うための思考」を本書は探し続ける。
- 2025年8月15日ジェリコの製本職人ピップ・ウィリアムズ,最所篤子読み終わった@ カフェ紙を折り、糸でかがり、本を仕立てる。その手仕事は人と本の密接なコミュニケーションだ。ことばを集める妹モード、ペギーの学びへの想いを支えようとする仲間たち。本と人、人と言葉、人と人が結び合う網の目が、学びたいと願うすべての人に可能性を開いてくれる物語だった。
- 2025年8月9日日記の練習くどうれいん読み終わった@ 自宅書いたり書かれなかったりする日々の「日記の練習」と、月に一度の「本番」。おもしろくて巧みな日記には、ことばになりづらい感情がそれでもことばへ向かって輪郭を得ようと悶えた痕跡や、一瞬を捉えたきらめきがあるのだと知る。そんな技術は自分にはないのにと思うのに、それでも日記を書きたくなる本だった。
- 2025年7月27日モリでひと突き栗岩薫読み終わった@ 自宅山形大学在学中にサークル活動としてモリ突き式の魚取りにハマり、そのまま国立科学博物館の魚類の研究者になっていく著者の学生〜社会人の記録。 魚取りがいかに楽しいかが素直に綴られていて、無謀で仲間との距離が近く発見ばかりの青春時代が眩しい。 著者も作中で触れているが、「青春」が「経験」によって失われていく寂しさと「経験」を積み上げた先にまだ何かあるかもしれないと信じたい瞬間みたいなものも描かれていた。あと魚が食べたくなります。
- 2025年7月21日羽田圭介、家を買う。羽田圭介読み終わった@ 自宅作家、羽田圭介が家を買うまでの話。何をするにもよく調べており、体験記としても参考になるが、時折現れる小説家の文体で銀行や不動産会社、売り手等とのやり取りが語られていくため「いま自分は何を読んでいるんだろう」と困惑するおもしろみがあった。「投資」と「家を持つこと」のあいだがじわじわと浮かび上がっていく展開も納得感あり。
- 2025年7月20日新版 名作椅子の由来図典西川栄明読み終わった@ 自宅古代エジプト(5,000年前!)から現代に至る名作椅子たちの歴史、ルーツ、作製秘話。ウィリアム・モリスのアーツアンドクラフト運動やそれに連なるアール・ヌーヴォー、日本の民藝運動といった文化的転換点及び新素材の登場のようなテクノロジーの特異点のたびに起こる椅子の進化がおもしろい。デザイナー名と名作椅子の特徴・優れている点をざっくり追えるので「『良いとされている椅子』ってどういうことなの」みたいな気持ちに応えてくれる本でした。
- 2025年7月19日水上バス浅草行き岡本真帆読み終わった@ 自宅あかるく素直で柔らかな世界の中にも一瞬沈み込むような感情があり、とても人の気配があった。印象に残った句、9つ。 「働いて眠って起きて働いて擦り減るここは安全な場所」 「文通はきっと私で終わるだろう遣跡のようなしずけさの町」 「Yeah!めっちゃポリデントって送ろうと入れ歯の絵文字探してた ない」 「前をゆく知らない人が曲がりたい角の全てを曲ってしまう」 「パスワードの中に犬の名住まわせて打ち込むたびに君に会いたい」 「人間はいつも勝手だ 愛犬をドクはふざけた車に乗せて」 「ほとんどもうセックスだった浮ついた気持ちでなぞりあうてのひらは」 「食べてみる? 差し出したのがなんなのか確かめもせず君は頰張る」 「教室じゃ地味で静かな山本の水切り石がまだ止まらない」
- 2025年7月13日
- 2025年7月5日きみはメタルギアソリッド5:ファントムペインをプレイするジャミル・ジャン・コチャイ,矢倉喬士読み終わった@ 自宅作者のジャミル・ジャン・コチャイはパキスタンの難民キャンプが出生地の1992年生まれ。ゲームやネットなど我々の目の前にあるポップカルチャーと、今も続く紛争やアメリカとイスラム教圏の関係性含む作者のルーツを接続していくような短編集。
- 2025年6月22日新しい恋愛高瀬隼子読み終わった@ 自宅
- 2025年6月17日歌集副読本 『老人ホームで死ぬほどモテたい』と『水上バス浅草行き』を読む上坂あゆ美,上坂あゆ美、岡本真帆,岡本真帆読み終わった@ 自宅
- 2025年6月7日
- 2025年6月5日らせんの日々安達茉莉子,社会福祉法人南山城学園読み終わった
- 2025年6月1日中動態の世界國分功一郎読み終わった@ 自宅
- 2025年5月22日「勤労青年」の教養文化史福間良明読み終わった@ 自宅
- 2025年5月15日清く正しい本棚の作り方(TT)戸田プロダクション読み終わった@ カフェ書籍化の元になったホームページでもほぼ読めるが、本書はその内容に加えて後半に本棚制作過程が写真で収められており、これが大変分かりやすかった。 “家具屋で売られている本棚は、我々の理想の本棚とは大きく乖離したものばかりだ。最大の不満は天井まで届く高さがないことで、その割にやたら奥行きばかりあり過ぎる。(…)探し出して買ってみたら、これがなんとも弱々しいペコペコの棚板だ。(…)必ず棚板が垂れ下がり、気が付いたら誠に「みすぼらしい」姿に成り下がってしまう。” (『清く正しい本棚の作り方』P.6)
- 2025年5月10日ベオグラード日誌山崎佳代子読み終わった@ カフェセルビアに暮らす詩人の2001年から2012年にかけての記憶。作者が書き留める冷めた日本語は、その時間を生きた人たちを同情や哀れみのみに決して回収させない強度がある。その強度は「誰かに届くべき」と願われた、ひらかれたことばであるが故なのかなと思いました。
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