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- 2026年1月3日
両膝を怪我したわたしの聖女アンドレア・アブレウ,五十嵐絢音,村岡直子読み終わった@ 自宅スペイン・カナリア諸島の山腹に住む10歳の「わたし」と、親友のイソラ。ラテンアメリカ文化の強い土地で、まだクソガキの2人が土埃とゲロにまみれながら過ごすある夏の様子。家族以外の大人とはうまく喋れない「わたし」と、いつでも勝ち気で物怖じしないイソラはどこに行くにもいつも一緒で、だからお互いが必要で許せなくて、二人の境界は曖昧になる。原書は作者の故郷でもある同地方の方言で書かれいるそうで、翻訳もそのニュアンスを汲んでいるのか荒々しい。成長の淡いにいる主人公の目に映るイメージの破片を眺めているみたいだった。 - 2025年12月28日
ソースの歴史メアリアン・テブン,伊藤はるみ読み終わった@ 自宅留学先のフランスで「自分のソース体験がいかに限定的だったか」に気付き、ソースの多様性に目覚めた著者。マヨネーズやケチャップ、マスタード、魚醤・醤油、タバスコ、ウスターソースなどはラテン語の「condire(入れる・風味をつける・保存する)」を語源とする「コンディメントソース」で、フランス料理はこの延長線上にある。食物の味を引き立てるソースは別潮流のグレイヴィ。肉から作り、肉に添えるためのグレイヴィソースは、ヨーロッパでのトマト普及のきっかけになるトマトソースのミッシングリングでもあるらしい。歴史をたどる楽しさがある。「マッシュルームケチャップ」は醗酵ソースの一種。トマトケチャップがブームになる19世紀初めにアメリカでは淘汰されてしまったが、イギリスでは今でも根強い人気なんだそう。食べてみたいな。 - 2025年12月20日
きのこのなぐさめロン・リット・ウーン読み終わった@ 自宅ある日、ロンは夫エイオルフを急病で亡くしてしまう。悲しみを抱えながら夫の国ノルウェーでひとり暮らすロンが市民講座で出会ったのは、きのこだった。ノルウェーの森、ニューヨークの公園、近所の花壇。ロンは文化人類学者としてモースの「贈与論」なども引き合いに出し、きのこを巡る人間の興奮に巻き込まれながら、ノルウェーと自らの故郷マレーシアの死生観の違いを見出す。動物界に収まりきらないきのこの曖昧な生体に惹かれていくうちに、ロンの「ごく個人的な悲しみ」と、「きのこが存在するこの世界」が混じり合う。 個人の知性により広がっていく世界と、喪失感を心身が受け止めるためのスペースは比例しているようで、そのプロセスは美しくもあるし、現実を知性で意味付ける危うさにも読める。ロンがきのことエイオルフを語る言葉は鋭利だ。 - 2025年12月13日
三四郎夏目漱石読み終わった@ 自宅 - 2025年12月2日
学ぶとは 数学と歴史学の対話伊原康隆,藤原辰史読み終わった@ 自宅数学者の伊原康隆氏と歴史学者の藤原辰史氏による往復書簡集。文学、絵画、外国語、音楽、戦争、大学教育、AIなど幅広い分野に及ぶやり取りで、時には忖度なく間違いを指摘し合う真摯な姿勢に憧れを感じる。より深い理解を目指そうとする「学び」は、予定調和のない対話の場そのものが含まれている。孤独な作業では得難いのだと、少し寂しい。 - 2025年11月30日
高丘親王航海記澁澤龍彥読み終わった@ 自宅アジアをさまよう、天竺を目指した幻想の旅。高丘親王が旅の中で出会うのは、言葉を覚えるジュゴンや下半身が鳥の姿をした女など、異形のものたちばかり。けれども、それは実際の出来事なのか親王の夢だったのか、判然としない。親王のどこか飄々とした佇まいに流されて、こちらまで微熱にまどろむような浮遊感が印象的だった。「天竺に行くこと」は、親王の生にとってどんな意味を持っていたのか。「天竺を想って過ごすこと」が彼の時間をどのように規定していたのだろうか。では、今のぼくにとっての「天竺」と、生活の中にある「旅」とは。 - 2025年10月18日
ディフェンスウラジーミル・ナボコフ,若島正読み終わった@ 自宅チェスに取り憑かれたルージンは、作者によって書き込まれたこの世界の摂理に対し、チェスの防御戦略のように最適なディフェンスを探り続ける。信用できない“この作品”の書き手、緻密さゆえに煙に撒かれるような、ナボコフの描く精巧な世界、社会生活の中でチェスだけがその資質にぴたりと合うルージン。世界の見え方と孤独を巡る話だと思った。 - 2025年10月5日
揺れる輪郭グレアム・マクレー・バーネット読み終わった@ 自宅サイコセラピストであるブライスウェイトの研究を進める、本書の書き手らしき「私」。ある日、ブライスウェイトに治療を受けたという匿名女性の記録ノートが届くのだが…。 「だれかによって書かれたもの」が避けがたく帯びてしまうフィクショナルさと、「だれかを演じながら輪郭を濃くしていく個人」の頼りなさゆえの強度。その揺れに居心地の悪さを感じるが、その歪さが生の実感を強調してくれるのも事実だった。 - 2025年9月23日
読み終わった@ ファミレスお馴染み幸福の科学、真如苑、崇教真光、統一教会、創価学会などが登場。章立てはされていないが、天理教や日蓮正宗も触れられる。アフリカのアミニズム的原始宗教と日本の神道含む宗教観に親和性があり、キリスト教・イスラム教などが明確にしない部分に新興宗教の「わかりやすさ」が答えを示す点が受け入れられていると著者は指摘する。 個人的におもしろかったのは、日本ではどうしても気になる過剰な寄進やカルト的孤立といった雰囲気が、本書からは感じられなかったところ。日本から距離があるからか、それとも経済格差でそもそも商売的にうまみの少ない場所だから?日本では注目されづらい新興宗教の教義そのものが流通するために、地理的要因がうまく機能する場合もあるのかも。 - 2025年9月5日
ソーンダーズ先生の小説教室 ロシア文学に学ぶ書くこと、読むこと、生きることジョージ・ソーンダーズ,柳田麻里,秋草俊一郎読み終わった@ カフェぼくにとってソーンダーズの『短くて恐ろしいフィルの時代』は印象深い作品で、その作者の技術論が知りたくて手に取った。 本書ではチェーホフ、ルツゲーネフ、トルストイ、ゴーゴリの小説を題材に、「よい小説とはなにか」「それを書くにはどうしたらいいのか」についてソーンダーズが「授業」する構成。7つの短編小説は創作の技術を得るための検体(そう、それは技術のために完成された表現を検分していく少しのグロテスクさも含んで!)として解体されていく。どれも巨匠たちが19世紀ロシアの検閲をくぐり抜け書いたものであり、そもそも作品自体がおもしろい。 ところがソーンダーズの語りを聞いたのちに読み返すと、3D化されたように表現が立ち上がってくる。たとえば、緩慢で鼻持ちならなかった人間がどうして魅力的に映るのか。村の居酒屋の冗長な描写に作者があえて立ち止まった意図は何か。気は良いが抵抗せずに人生を終えていく凡人になぜ我々は心動かされるのか。短編を読み終えた後に続くソーンダーズの授業は、ひとつの解釈を示していく。そのアウトラインを持って作品を見直すと、おもしろさがより迫ってくるのだった。 題材とされている短編は以下のとおり。すべて本書のための新約。 ・アントン・チェーホフ『荷馬車で』 ・イヴァン・ツルゲーネフ『のど自慢』 ・アントン・チェーホフ『かわいいひと』 ・レフ・トルストイ『主人と下男』 ・ニコライ・ゴーゴリ『鼻』 ・アントン・チェーホフ『すぐり』 ・レフ・トルストイ『壺のアリョーシャ』 - 2025年8月19日
野生のしっそう猪瀬浩平読み終わった@ 自宅異質な存在を勝手に解釈し、行政的判断に基づき管理する社会。どのような状況でも、自らの内面にのみ従い、野生の力をまとうかのようにしっそうする兄。兄の経験や思考を追いながらも、あくまで兄を理解するのではなく、自分自身の思考の仕方を問い直す著者。他者といっとき時間を共にし、身体性を共有することで、「誰かを人ではないものとして扱う思考に対して、抗うための思考」を本書は探し続ける。 - 2025年8月15日
ジェリコの製本職人ピップ・ウィリアムズ,最所篤子読み終わった@ カフェ紙を折り、糸でかがり、本を仕立てる。その手仕事は人と本の密接なコミュニケーションだ。ことばを集める妹モード、ペギーの学びへの想いを支えようとする仲間たち。本と人、人と言葉、人と人が結び合う網の目が、学びたいと願うすべての人に可能性を開いてくれる物語だった。 - 2025年8月9日
日記の練習くどうれいん読み終わった@ 自宅書いたり書かれなかったりする日々の「日記の練習」と、月に一度の「本番」。おもしろくて巧みな日記には、ことばになりづらい感情がそれでもことばへ向かって輪郭を得ようと悶えた痕跡や、一瞬を捉えたきらめきがあるのだと知る。そんな技術は自分にはないのにと思うのに、それでも日記を書きたくなる本だった。 - 2025年7月27日
モリでひと突き栗岩薫読み終わった@ 自宅山形大学在学中にサークル活動としてモリ突き式の魚取りにハマり、そのまま国立科学博物館の魚類の研究者になっていく著者の学生〜社会人の記録。 魚取りがいかに楽しいかが素直に綴られていて、無謀で仲間との距離が近く発見ばかりの青春時代が眩しい。 著者も作中で触れているが、「青春」が「経験」によって失われていく寂しさと「経験」を積み上げた先にまだ何かあるかもしれないと信じたい瞬間みたいなものも描かれていた。あと魚が食べたくなります。 - 2025年7月21日
羽田圭介、家を買う。羽田圭介読み終わった@ 自宅作家、羽田圭介が家を買うまでの話。何をするにもよく調べており、体験記としても参考になるが、時折現れる小説家の文体で銀行や不動産会社、売り手等とのやり取りが語られていくため「いま自分は何を読んでいるんだろう」と困惑するおもしろみがあった。「投資」と「家を持つこと」のあいだがじわじわと浮かび上がっていく展開も納得感あり。 - 2025年7月20日
新版 名作椅子の由来図典西川栄明読み終わった@ 自宅古代エジプト(5,000年前!)から現代に至る名作椅子たちの歴史、ルーツ、作製秘話。ウィリアム・モリスのアーツアンドクラフト運動やそれに連なるアール・ヌーヴォー、日本の民藝運動といった文化的転換点及び新素材の登場のようなテクノロジーの特異点のたびに起こる椅子の進化がおもしろい。デザイナー名と名作椅子の特徴・優れている点をざっくり追えるので「『良いとされている椅子』ってどういうことなの」みたいな気持ちに応えてくれる本でした。 - 2025年7月19日
水上バス浅草行き岡本真帆読み終わった@ 自宅あかるく素直で柔らかな世界の中にも一瞬沈み込むような感情があり、とても人の気配があった。印象に残った句、9つ。 「働いて眠って起きて働いて擦り減るここは安全な場所」 「文通はきっと私で終わるだろう遣跡のようなしずけさの町」 「Yeah!めっちゃポリデントって送ろうと入れ歯の絵文字探してた ない」 「前をゆく知らない人が曲がりたい角の全てを曲ってしまう」 「パスワードの中に犬の名住まわせて打ち込むたびに君に会いたい」 「人間はいつも勝手だ 愛犬をドクはふざけた車に乗せて」 「ほとんどもうセックスだった浮ついた気持ちでなぞりあうてのひらは」 「食べてみる? 差し出したのがなんなのか確かめもせず君は頰張る」 「教室じゃ地味で静かな山本の水切り石がまだ止まらない」 - 2025年7月13日
- 2025年7月5日
きみはメタルギアソリッド5:ファントムペインをプレイするジャミル・ジャン・コチャイ,矢倉喬士読み終わった@ 自宅作者のジャミル・ジャン・コチャイはパキスタンの難民キャンプが出生地の1992年生まれ。ゲームやネットなど我々の目の前にあるポップカルチャーと、今も続く紛争やアメリカとイスラム教圏の関係性含む作者のルーツを接続していくような短編集。 - 2025年6月22日
新しい恋愛高瀬隼子読み終わった@ 自宅
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