mikechatoran "深淵のかなた" 2025年9月6日

深淵のかなた
深淵のかなた
ピラール・キンタナ,
加藤尚子
8歳の少女のまなざしを通して描かれる家族の物語。子供のことだから、その語りには齟齬もあれば、不足も矛盾もある。若くて美しい母は学問も好きな相手との結婚も家族に反対された挙句年の離れた父と結婚した。母性的なタイプとはいえず、おそらく鬱病だろうか。父はといえば出生時に母を亡くし、父には顧みられず親戚に育てられた。寡黙で穏やかだが、時折目に「怪物」が現れる。両親それぞれの「深淵」を描きつつ、クラウディアは両親を失うこと、見捨てられることという自らの深淵に怯える。前作『雌犬』と対になる作品のように感じた。
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