タイヤキ "消滅世界" 2025年9月6日

消滅世界
消滅世界
村田沙耶香
夫婦間の交渉が「近親相姦」としてタブー視される潔癖な世の中になった世界の物語。 夫婦はあくまで兄妹と同等で、恋人は外で作るものという倫理観。後半になると「家族」「恋」「性」ですら存在しないものとなる。 世の中は常に変化の最中にあって、そのグラデーションを抜けたあとは古い価値観として揶揄されてしまう。 母親が娘に対して、自分と同じように原始的な妊娠の方法を選ぶように洗脳している描写は気持ち悪いと感じてしまった。 しかし、仮に技術が進んで、原始的な妊娠が否定されて人工授精で妊娠するのが普通になったとき、同じ状況を受け入れられるかといえば、そうでもない。 己は正常だと思いながらも、異常な環境にあっさりと適応していく主人公に恐怖を覚えた。
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