

タイヤキ
@taiyaki_r03
重い小説ばかり読み漁る社会人。
読むペースはゆっくりめ
- 2025年11月24日
見つけたいのは、光。飛鳥井千砂読み終わった育児ブログを掲載している三津子、妊娠を理由に雇い止めに遭った亜希、マタハラの加害者になってしまった茗子が重苦しい気持ちをぶつけ合う話。 産前産後の時期の女性はどうしても休みがちになるので、誰かに仕事を託さないといけない場面がある。そんな時に、仕事を抱え込みすぎて爆発してしまった人の、行き場のない叫びに、申し訳ないが共感してしまった。 しかし、茗子の場合、トラブルを招いている妊婦自身に問題があった。子育てをしている人が図々しいのではなく、図々しい人が出産して育児をしていただけなのだ。妊娠出産が迷惑と受け取られるような環境そのものが悪なのであるーーということを念頭に置かないといけない。 - 2025年11月22日
読み終わった一ヶ月後に小惑星が衝突して地球が滅びると宣告され、倫理観が崩れ去り、荒廃していく世界。クラスの苛められっ子とマドンナ、18年前に別れた恋人同士が交わって、残り僅かな生を光で満たしていく物語。 「明日地球が滅びたらどうする?」という質問は、人生のどこかで一度は登場しているセリフだろう。 形は違えど、皆、鬱屈したものを抱えており、このまま世界が終わればいいと願いつつも、現実になればなかなか受け入れることはできない。罪を裁く時間も法律もあって無い様なものだからと、殺人をしてしまう者もいれば、自分にどんな罪があったか、理由をつけて受容する者もいる。 どうせ滅びてしまうなら、方法は何でもいい。心の整理がついて、死ぬ瞬間まで納得できる行動を選び取ることができれば。 - 2025年11月10日
骨を彩る (幻冬舎文庫)彩瀬まる読み終わった何かしらの死に触れている人々が少しずつ重なり合い登場する短編集。 表紙の、銀杏の葉が散るイラストを見て、祖母が亡くなった時のことを思い出した。ちょうど、葉が降り積もって絨毯ができる時期で、遺された木の幹と枝が、血肉を失った骨みたいだと感じた記憶がある。その年以降は、黄色に染まった銀杏の木を見ると祖母のことが頭に浮かぶようになった。 皆、誰かがログアウトしたあとの世界を当たり前に過ごしているのだ。 母を小さいころに亡くした小春が、周りの大人から気を遣われることに嫌気が差していて「普通でありたい」と願うように。 なにか言葉にするには形にしづらいが、確かに胸に迫るものがある静かな物語。 - 2025年10月4日
二木先生 (ポプラ文庫)Ney,夏木志朋読み終わったASD傾向のある高校生が、ある重大な秘密を抱える担任教師と関わることで、自分の生きづらさの理由と、立ち直り方を見いだしていく物語。 最後、担任が窮地に追い詰められたときに、担任が実践した「Aの自分として生きるわけでもなく、Bの自分を晒すわけでもなく、Aの面を被る」という立ち回り方を学習して、担任をかばう姿に驚かされた。 偽物の自分として生きることは並大抵の努力では実現できないだろうし、彼の人生にとって正しいのかは断言できないが、処方箋の一つとして参考にはなるなと思った。 - 2025年9月14日
光のとこにいてね一穂ミチ読み終わった家庭環境に歪みを抱える少女たちが出会いと別れを繰り返しながら揺るがない愛を紡いでいくお話。 タイトルから、「自分は側に居られないけれど、あなただけは光の中にいて欲しい」という祈りのように聞こえたがまさしくその通りで、別れの言葉として何度も作中に登場した。 家庭の事情で何度も引き離される2人だけど、自分の意志をあまり出さなかった結珠のほうから、「離れたくない」という強い思いで果遠を追いかけていく姿が良かった。 お互いに夫は居たけれど、これは挟まる隙がない……。 - 2025年9月6日
消滅世界村田沙耶香読み終わった夫婦間の交渉が「近親相姦」としてタブー視される潔癖な世の中になった世界の物語。 夫婦はあくまで兄妹と同等で、恋人は外で作るものという倫理観。後半になると「家族」「恋」「性」ですら存在しないものとなる。 世の中は常に変化の最中にあって、そのグラデーションを抜けたあとは古い価値観として揶揄されてしまう。 母親が娘に対して、自分と同じように原始的な妊娠の方法を選ぶように洗脳している描写は気持ち悪いと感じてしまった。 しかし、仮に技術が進んで、原始的な妊娠が否定されて人工授精で妊娠するのが普通になったとき、同じ状況を受け入れられるかといえば、そうでもない。 己は正常だと思いながらも、異常な環境にあっさりと適応していく主人公に恐怖を覚えた。 - 2025年9月1日
汝、星のごとく (講談社文庫)凪良ゆう読み終わった瀬戸内の島に住む、似た境遇を持つ男女が波打ち際のように寄せたり離れたりする14年間の物語。 2人が遠距離恋愛を始めてからが本番。仕事の成功と失墜、家族の状態、共に過ごす相手の変化。会えない間も波乱と停滞がある。たとえ、他の人と触れ合う夜があっても、相手のことは変わらず思い続ける。暁美も櫂も諦めることの多い人生だったけれど、一番星のような存在を得られたのだから幸せだったのだろう。 「わたしは、愛する人のために人生を誤りたい」という一文が美しい。 - 2025年8月25日
ひとりでカラカサさしてゆく江國香織読み始めた - 2025年8月25日
ぎょらん町田そのこ読み終わった「ぎょらん」という都市伝説に苦しめられたり、救われたりする人々を描いた短編集。 葬式は、亡くなった人だけでなく遺された人の気持ちの整理のために行うものでもある。 死者の、大切な人を想う気持ちが温かいものが多く、何度も涙がこぼれた。 大事なものを喪ってしまったあとの世界を前向きに生きていけるよう、背中を押してもらえる一冊。 - 2025年4月28日
かつて読んだ川﨑朱音という少女が、屋上から飛び降りた。「いじめはなかったか」というアンケートが配られるが、どこまでの真実が記されているのだろうか。 朱音が袖を意地でもまくらない描写で、自殺の理由はだいたい想像ついたけれど、オチはどこまでも救われない。精神的に追い込まれるとどんどん人が離れていき、悪い方向に転がっていくので目も当てられなくなる。 莉苑は本当に聡明だ。実際に身の回りに居たら得体のしれない子だと遠ざけたくなるだろうけど。「この世界は生きてる人のためにある」からこそ、飛び降りた朱音よりも、眼の前で泣いているクラスメイトを助けようとしたわけだ。 彼女の「生きてる人は真実をねじ曲げる権利がある」という信念のもと、クラスメイトを引っ掻き回す上に、自分への濡れ衣にもなる遺書を破り捨てた。莉苑をサイコパスだと言う意見もあったが、自分はそう思わなかった。彼女の頭脳で最善を尽くしただけな気がする。 皆、立場は違えど高校という狭い世界の中で自分の信念を貫いているのがいい。
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