ヤヲラ "回復する人間" 2025年9月7日

ヤヲラ
ヤヲラ
@Yawora_0302
2025年9月7日
回復する人間
回復する人間
ハン・ガン,
斎藤真理子
ハン・ガン作品3冊目。 作者自身が怪我を負い、ずっと感覚を失っていた患部が痛んだ際に、それが傷が治ったということなのだと医師に告げられたことがあったらしい。痛みを感じることが人の回復の過程には必要なのだいう意味合いのことがあとがきに書かれていた。 この短編集に登場する語り手は皆、心身に深い傷を負っている。その傷や痛みの有様が、一文一文、一文字一文字に刻み込まれるよう書かれてある。静かに、とても強く。 だからといって読みながら目を背けたくなる(あるいは読むのを中断してしまう)のかというとそんなことはなかった。それはこれらの作品に通底するテーマがタイトルの通り『回復すること』だからだと思う。回復の兆しはほの明るい。 だから私は「エウロパ」のふたりが夜を歩くシーンに見惚れ、否が応でも癒えてしまうということを拒絶する表題作の語り手の心情には覚えがあると強く思い、火とかげのラストに美しい希望を見た(ついぞ回復しえない「左手」の語り手の抑圧された苦しみが暴発し、破滅していく様は夢中で読んだのだけど)。 この流れで、6年程自宅に積んである『菜食主義者』も読んでみたいと思う。毎回同じ場面で一旦置いてそのままにしてしまうから、今度こそ読み通せたら良い。
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