なないろ文庫☆みわ "白さぎ" 2025年9月7日

白さぎ
白さぎ
バーバラ・クーニー,
セアラ・オーン・ジュエット,
石井桃子
絵本としては邦訳初出版とのこと。 ジュエットは児童文学の作家ではなく、この『白さぎ』という物語も子どものために書かれた短編ではない。 にもかかわらず、アメリカでは1963年にクーニーが絵を付け、絵本として出版されている。 祖母と2人、農場に暮らし、自然を余すところなく享受し愛する少女・シルヴィア。 彼女の前に突然現れた鳥打ちの若者。 彼に惹かれ(初恋?)、その熱に突き動かされていくシルヴィアの胸の内が、行間からひしひしと感じられる。 それでもなお、恋心さえ無効にする、自然の尊さに圧倒された。 ニューイングランド地方、メイン州の美しい自然描写にうっとりする。 ジュエットの文章もそうであろうが、石井桃子による美しい日本語の文章が秀逸✨ 「隠者のすまい」 「腹蔵なくしゃべる」 こんな表現から汲み取れる子どもいるんかなあ? 絵本としての訳とは思えないけど、すばらしい邦訳。 そもそも、石井桃子さんは絵本のために訳したのではないし、そうよね、こういう表現も使われて当然でしょう。 そして、クーニーの気品あふれる絵が文章の美しさと相乗効果で、この作品をより味わい深くしている。 日本画の影響も感じさせる絵で、老松の佇まいの荘厳さに思わず息を呑んでしまう。 こういう絵本を読むと、絵本は文学であり芸術でもある、とつくづく思う。
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