犬山俊之 "我が友、スミス" 2025年9月7日

我が友、スミス
「スミス」とは、ジムなどにある筋トレ用のトレーニング器具「スミスマシン」。 このスミスマシンを愛する主人公の一人称筋トレ小説。「私」の現代的で、冷静な語りに安心して身を任せていると、いつの間にか筋トレ世界の深みへぐいぐい引き込まれてしまいます。 会社の男性同僚たちから投げ掛けられる「女性は大変ですね」という「なにげない」言葉が「私」にからみつく。その呪いの言葉を、無視するのか、飲み込むのか、振り払うのか、蹴飛ばすのか……。鍛えられる肉体と同様、文体も緊張感を増しながら、クライマックスのボディビルの大会へなだれ込みます。見事な構成。 ライムスター宇多丸氏がラジオの映画評でよく言う「行って帰ってくる話」。わかりやすく冒頭場面と最後の場面が同じ場所で同じ事をしているところなのですが、見え方が全然違います。単純なハッピーエンドではないものの、読んでるこちらも(心の中で)グッと拳を握りしめたくなる物語です▼
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