漆野凪 "ビューティフルからビューティ..." 2025年9月4日

漆野凪
漆野凪
@urushinonagi
2025年9月4日
ビューティフルからビューティフルへ
学生である静、ナナ、ビルEの3人が、なんとか日常を生き延びているモノローグが綴られている。抽象的すぎてわからない文章もあるのだが、言葉の選び方や組み合わせ方がとにかく気持ちがいいし、文章の構成もだんだんと一点へ収束していく爽快感がある。一本、筋のような信念の通った文章。  ネグレクトを受けてきた少女が「あの人は私の感情をカツアゲしてこないから、私はことばぁが好きだ。」と内心を吐露するシーンがある。この、感情のカツアゲという概念が、今の私にはとてもしっくりきた。  例えば、高瀬隼子『おいしいごはんが食べられますように』も、感情のカツアゲがテーマの作品だ。過度な共感って、感情の共有による仲間意識の形成って、感情のカツアゲだ。生き延びるためには無害ですよ、と同じ感情を差し出すしかない。そうして、日常をやり過ごしていくしかない。  作中の特に好きな一節に「こう、わたし、熱々の絶望のあんこを、薄くて透明な希望のおもちで包んでるみたいなすてきな人間だ。」というものがある。わたしもこうありたい。生きることへの絶望が透けて見えるけれど、実際に触れようとすると希望にしか触れないような、そしてそれを自分で「すてき」と言えてしまうような人間になりたい。
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