
漆野凪
@urushinonagi
2025年9月8日

あのころなにしてた?
綿矢りさ
読み終わった
コロナ禍に日常が飲み込まれていく様子が描かれた日記。タイトルとその描写も凝っていて、「あのころなにしてた?」は基本的に青で描かれているのだが、「ころな」の三文字だけ黄色で描かれている。
この本の言葉選びがいいのはもちろんのこと、綿矢りささんの想像力の豊かさに驚かされた。「好きな人の息の通り道が可視化できるのは、なんだか面妖だ。もしいま自分が学生で、片想い中の何々くんがマスクをへこませてたら、ときめく気がする。」という文章なんて、その最たるものだ。
「以前は自著の読者の方々から共感が欲しいと思ってたけど、今は共鳴したいと思う。自分の中に潜んでいる物語を探し当てるのに必死になっていたけど、最近は書き手より、むしろ読み手に脈打つ何かが潜んでいて、文章で読者の敏感な神経に触れたら、共鳴が返ってくるのではと感じている。」という記述にも納得させられた。共感ではなく共鳴。いい言葉だ。私の言葉も、いつか、誰かの心の一部を震わせられるだろうか。


