
ミオReads
@hanamio03
2025年9月8日

世界99 上
村田沙耶香
読み終わった
今年触れた物語の中でダントツで恐ろしい。
被害者であり加害者である、という読み手が持っているだろう共感と嫌悪を、グロテスクファンタジーという手法で「やや」ずらす。さながらレイヤーをずるりとずらされたみたいな世界観。けれど、その下には自分がいる世界が変わらず、なんならずらしたせいでより一層くっきりと透けて見えて、それがまた怖くてたまらない。世界99。被害者側だけに立つことを絶対に許してくれない。
「どうだ?便利だったものが、意志をもつのって、すっごくむかついて、面倒で、厄介で、できることなら目を瞑りたいだろ?お前らはさ、俺たちを、まるで極悪人みたいに、指差して、自分は被害者だから清らかだ、みたいな顔してたけどさ?同じだったろ?便利なものが現れたら、あっさり使ったろ?どこかおかしくても、目を瞑って、便利さの中で考えることなんかやめたろ?それがさ、お前らの正体なんだよ。人間ってものの正体なんだよ」
これを、自分は被害者側だとだけ信じ込めたら幸せだろうか。きっとそんなことはない。被害者だと信じ込んでいるから、「記憶を手術」しているから、本気で辛いし怒っているし、自分の加害性には欠片も気付けない。それが恐ろしい。
世界99は、被害者側だけに立つことを許してくれないので、親切なのかもしれない…なんてことはなく、それこそピョコルンのようにただそこにあるだけ。人間に都合のいいように、そこにあるだけ。ああ恐ろしい。恐ろしくて、もう何も聞きたくない気がするのに、絶対にこの世界の末路を知りたい。下巻も楽しみです。





