句読点 "君たちはどう生きるか" 2025年9月8日

君たちはどう生きるか
今月末にやる読書会に向けて読了。最後に読んだのがたぶん大学生くらいの時で、10年近く前。あらすじはだいたい覚えていたけど、細かいところはほとんど忘れてしまっていた。でも今回読み直してみて、色々この10年の間で本を読んだり経験したこともあり、グイグイ入ってきた。さりげない一文にハッとしたり。 人間関係網目の法則、ナポレオンについてのおじさんのNOTEの内容、雪の中の出来事のコペル君の葛藤と、その乗り越え方、お母さんのエピソード、、色々心に残る。 日中戦争が始まる1937年にこんな本が出ていたことに驚くし、この本が投げかける問い、目指す理想から、どんどんかけ離れていったそれからの日本や世界のことを思うと、気が滅入りそうになる。仮にこの本の中の時間も刊行当時のリアルタイムだったとしたら、当時15歳だったコペル君たちは、1945年頃には23歳くらいになっているはず。もしかしたら学徒出陣などで戦地に送られたかもしれない。 ガッチンこと、北見くんのお父さんは陸軍の軍人であり、戦場にも行っただろう。豆腐屋の浦川くんのような貧しい家庭の子どもは最も厳しい前線に送られたかもしれない。コペル君の叔父さんも、きっと赤紙で召集されただろう。 想像でしかないが、それは十分あり得ることである。 しかしこの想像をひとまず置いておいて、この作品世界の中だけに目を向けて見れば、なんて素晴らしい世界だろうと思う。この本が投げかける問いがまっすぐに90年の時を越えて、今にも突き刺さる。「君たちはどう生きるか」。 先日、石破さんが総理を辞めることを発表した。 これによって極右化が進むのではないかという危機感がある。また再び戦争への道を歩むのではないかと恐ろしい。なぜ人間は過去のことを学ばないのだろう。なぜ愚かなことを繰り返すのだろう。なぜ理想通りにいかないのだろう。 今吉野源三郎さんが新作を書くとしたらどんな内容になるだろうか。 しかしまだまだこの本は、この本が目指す理想的な世界のあり方と程遠い今の時代に、まだまだ力を持ち、何度も読み返される必要がある。普遍的な理想について語ってある。じっくり噛み締めながら、何度も読みたい。
読書のSNS&記録アプリ
hero-image
詳しく見る
©fuzkue 2025, All rights reserved