
自分
@Me_me
2025年9月8日

パン屋再襲撃 (文春文庫)
村上春樹
読み終わった
気づいたら読了していた。というか、読んだ感触すら、夢だったのでは?というレベルでふわっと終わる。まるで本の中に「寝ぼけながら歩く通路」みたいな空間があって、そこでぐるぐるしてるうちに外に放り出された、そんな感覚。
収録されている短編すべてに共通する感想、それは一言、「あっけない」。
タイトルに踊る【パン屋】とか【象】とか【ねじまき鳥】なんて、それだけでこっちは身構えるのに、読めば読むほど「で、結局これはなんなんだ?」と目が泳ぎ出す。でも気がつけば読み終わってる。しかもなんだか納得している。くやしい。
春樹作品の真骨頂は、例えるなら「高熱のときに見る夢」。これは言い得て妙。現実味はない。でも筋がある。いや、筋っぽい何かがある。
それに、キャラクターたちの軽快なセリフ回し。あの軽さ。ときに真顔で飛び出す冗談。まるで作者の筆が勝手に踊り出して、春樹本人は横でアイスコーヒーでも飲んでたんじゃないか?というくらい自然体。
こちらとしては、もう物語にしがみついて読むしかない。現実と非現実のはざまを泳ぎながら、なんとか意味を見つけようとする。でも、そこに意味なんて最初からなかったのかもしれない。
それでも読後感は不思議と悪くない。むしろ心地いい。これはいったい……?
結論:これは小説ではない、詩歌である。
そう思うしかない。鈍才の私には、それが精一杯の理解。
