小池陽慈 "手の倫理" 2025年9月10日

小池陽慈
小池陽慈
@koike_yoji
2025年9月10日
手の倫理
手の倫理
伊藤亜紗
再読を終えた。 やはり、名著。 身体をめぐる哲学的な思索を学んでいくうえでの格好の入門書(+α)として、今後も読み継がれていくだろう。 著者はその用語を一切使っていないけれど、私のイメージする「脱構築」というものは、まさに、本書の述べる全体的内容・展開そのものである。 触覚というものを契機に、自他の複雑な相互嵌入、意図されたメッセージと意図されぬメッセージとの解くことのできない絡み合いを見出すこと。そうした脱構築的な介入によって境界や個我を揺さぶり、そこに、他者への開かれを、あるいは自でも他でもない領域を生成していく。 何より素晴らしいのは、そうしたテーマを、観念論ではなく、著者や著者と繋がる人々たちの具体的な実践、その報告を通じて、きわめてリアルに物質的に体感させてくれることだ。わかりやすく言えば、具体例の「なるほど!」感がものすごい。爽快ですらある。 私の読解力が上がれば、もっともっと味わえる一冊なのだろうなぁ。 また、数年後に、再々読すると思う。 そのとき、どう読み返せるのかが、今から本当に楽しみだ。
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