
socotsu
@shelf_soya
2025年9月10日

わたしがいなかった街で
柴崎友香
読み終わった
心に残る一節
遠くに生きている人がもしかしたら自分だったかもしれないこと、でも自分とは絶対に交代しないことを考える。
"日常という言葉が指すなにかがあるとしたら、あのときも、現在も、遠い場所でも、ここでも、同じ速さの時間で動き続けている街の中に、ほんのわずかのあいだだけ、触れたように感じられる、だがその次の瞬間には、もうそれがどんな感じだったか伝えられなくなってしまうような、そういう感じかたのことだと、思い始めている。
見たり忘れたり現れたり消えたりしたあとで、わたしの中に残っている数少ない確かなことは、自分が今、この世界で生きていると思うこと。わたしは生きているし、映画のセットや張りぼてみたいに思えても、今この網膜に映っているものは、そこにあって、近くまで行けば触れる。そして、しばらく見ていてもなくならなかった。"
p.172





