
読書日和
@miou-books
2025年9月10日

「イスラエル人」の世界観
大治朋子
読み終わった
読む前、私は今の状況を「ジェノサイド」としか思えず、嫌悪感を抱いていた。ホロコーストを題材にした映画『関心領域」すら観たくない、と思うほどに。(冷静になれなかった)
本書を通して見えてきたのは、ユダヤ人の論理「ここは約束の地であり、占領ではなく帰だ」という視点と弱く追われる側だった太古の記憶。
そして、ガザの子どもたちが遺体となって冷蔵庫に並ぶ一方で、そのほんの近くでイスラエルの子どもたちがアイスクリームを食べているという、あまりに残酷な日常の落差。
なんで平気でいられるの?著者も疑問を投げかけるけれど、私も全く理解できなかった。
兵役を終えた兵士たちが「光と闇」の記憶とどう折り合いをつけるのか。平和教育を絶たれた世代が、いま極右政権を支えていること。ホロコースト、「被害者であること」を手放せないまま、衝突し続けていること。どの場面も胸に重く残った。
読み終えても、「プロ・ピース」と言える境地には正直まだ届かない。嫌悪や無力感がむしろ強まった部分もある。けれど、娘を失った父エルハナン氏の「親イスラエルでも親パレスチナでもなく、プロ・ピースであってほしい」という言葉には揺さぶられた。
私自身はまだそこにたどり着けていない。けれど、それでも平和を願う気持ちを手放さないこと。それが、今の私にできる精一杯のことなのかも。




