
ricochet
@ricochet
2025年9月10日

アーモンドの木
ウォルター・デ・ラ・メア,
和爾桃子
読み終わった
幻想怪奇と児童文学、どちらの風味もありつつ、かつ文学の香りが濃く匂い立つような短編集。あとがきにある通り、デ・ラ・メアの文章は俯瞰をとらずそれぞれの人物からの視点に寄り添うが、そこには慈しみだけではなく、ひやっとするほど透徹した眼差しを感じる。時々、この人はもう何百年も生きてきたのではないかという気がしてしまう。デ・ラ・メアの作品は全体に神秘の靄がかかっているような読み心地だが、その源は情景描写の美しさや事実のあやふやさだけではなく、この眼差しにもあるのかもしれないと今回思った。人生の寂しさ、哀しさ、陰の部分をそのままに見つめて愛おしむありようは心惹かれるものがある。







