Ryota.T "ひゃくえむ。新装版(上)" 2025年9月11日

Ryota.T
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@ausryota
2025年9月11日
ひゃくえむ。新装版(上)
「やる気か?」「もちろんガチで」 負けるのは怖い。だから、会社を辞めて、評価の外にある海外へ飛び、ウィーン大学に行った。まだ日本人じゃ真剣には誰もやってない、哲学相談を始めた。そこには競争がなく、負けることがないから。でもライバルが現れた。阪大の同い年の博士学生。論文を書き、講師として教壇に立ち、対話も相談役にも挑む彼に勝てない、と思った。読んでる量が違う、と思った。 この夏、腹の調子が悪かったのは、ヨーロッパの記録的な猛暑ばかりではない。彼から、哲学から、逃げられないと思ったからだ。京都の研究者に、哲学をやるというのが、過去から学ぶことなしに、もしくは弛まぬ精神の鍛錬なしになし得ないことを突きつけられたからだ。文献を読んで書いたものを発表すること。自分のやった対話を専門家に見てもらうこと。格上の実践者の背中を見て学ぶこと。どれもこれも、震えが止まらなかった。自分が否定されるのが怖かった。 でも、真剣勝負なんだ。負けるかもしれない怯えも、否定されるかもしれない恐怖も含めての、本気の高揚と競争の昂奮なんだ。俺も、全力疾走しようとしてるんだ。 彼に勝ちたい。研究者をギャフンと言わしてやりたい。哲学することを試みるというのは、論理の展開(アーギュメント)なんかじゃなしに、真であるものを捉え、語ろうとする勇気であり、真であるものは出来事として、隠された状態から姿を現すのだと言いたい。 ああ、全力疾走したくないな。疲れるから。負けたら嫌だし、色々恥かくし……ああ、全力疾走したくないな。 「やる気か?」「もちろんガチで」
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