
句読点
@books_qutoten
2025年9月11日

「利他」とは何か
中島岳志,
伊藤亜紗,
國分功一郎,
磯崎憲一郎,
若松英輔
読み終わった
とても面白く一気に読んでしまった。
5人の研究者がそれぞれ違うアプローチで「利他」の問題を考察しているのだが、「おわりに」で中島岳志さんが指摘するように驚くほど5人の考察は共通の方向に向かっていた。それは一言で表すと「うつわになること」。
利他という問題から、意志の問題、数値化の問題、贈与の問題、美の問題、責任の問題、などさまざまなことが見えてきて、それらが全て繋がっていく様がとても面白かった。ヒンディー語の与格構文と、古代ギリシャ語に存在した中動態はかなり重なる。私の中に何かがやってきて留まっている、という感覚。
自らの意志を超えたところに利他が宿るのであるが、それは自力を尽くした上で現れるもの。磯崎さんの小島信夫の小説を引きながらの創造にまつわる話はとても面白かったし、小島信夫の小説読んでみたくなった。わけのわからない力のようなものに従い、道を歩いていたらふと横に獣道のようなものがあってそこにはいっていってしまうような、作者自身にも訳がわからない方向性にぐんぐん突き動かされる感じ。カフカの小説や、夢で見るような不条理性。古代ギリシャの悲劇にも重なる。
「うつわになること」ということから、大器晩成という言葉も、そうした偶然性が宿るような人格を目指す言葉なのかなと思った。

